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2006年4月

2006年4月 3日 (月)

ユーラシアンクラブニュースレター第80号2006年4月1日


シカチアリャン村の自立のための活動を支援―募金、チャリティ・コンサートなど強化を 大野 遼

    ハバロフスクから70キロ北東にあるシカチアリャン村は、アムール川に小舟がすぐに繰り出せるように、アムール川右岸の河岸段丘に展開しています。アムールの岸辺の岩に描かれた300点ともいわれる岩絵(ペトログリフ)鹿やトラ、歌舞伎役者を思わせる人の顔が描かれ、顔はシャーマンのマスクとも言われています。岸辺の段丘の上にある13,000年前の住居跡ガーシャ遺跡はアムール川を望む。遡上する鮭、チョウザメ、巨大ナマズや鯉、フナ、ヤツメウナギからイトウなど希少魚の数々。

    人々は豊かな食生活だけでなく、衣服や靴までこれらの魚で作り、芸能を育んできました。これらの遺跡や文化、暮らしは、人々が太古の昔から自然の一部として暮らしてきたことを示しています。「川の人」-。これがシカチアリャン村の少数民族ナナイの民族的特色です。

    村人は自主的に村をどう変えていこうかと議論をはじめ、ニーナ村長は「これまで魚を獲ることしか知らなかった貧しい村民に仕事を確保するため努力したい」と動きはじめました。ユーラシアンクラブは16年間、この村に通い続けてきました。300人の村人のうち、相当数の人々の顔が浮かぶ。貧しいながらも、明るく元気で、特に女性がリーダーシップを執る、子どもたちを大切にする村。これらの子どもたちから未来を奪ってはならない、と思います。

    シベリアにはもともと、南方ツングース系のさまざまな民族が暮らし、16世紀以降ロシア人が進出し、最終的に北京条約(1860年)で「国境」による民族分断が行われるまで、地域の主人公でした。人々が、生活件を狭められ、衰退していく過程の一端は、日ソ合作の黒沢明監督の映画「デルス・ウザーラ」に描かれています。鉄道の敷設、都市の建設、狩猟、漁労の制限、言語文化の制限、さまざまな制約があった中で、まさに暮らしを支えるアムールの汚染が近年進み、「魚を食べた猫が死んだ。犬が死んだ」と風説も語られる、「漁労」の危機を肌で感じる事態になってきました。中国の「東北地方開発」による工場排水のアムール川流入は、少数民族の存在を脅かす動きになってきました。

    現代という時代は、日本でも、ロシアでも、中国でも、「国家」や「支配的」民族が、少数民族の暮らしや文化を制約してきたという歴史をもっています。しかし日本人と文化の中に、地名を含め先住民族のさまざまな文化を継承して今日に至ることが歴然としているように、ロシアや中国という国家や支配的民族も少数民族に、文化的経済的な恩恵を受けてきたことは明らかであります。大国の豊かさは、少数民族を抜きに考えることはできるはずがありません。少数民族の村の暮らしを守ることは、本来地域の国家や地方政府の仕事であると考えますが、なかなか手の及ばないこともあり、できる範囲で友人を支援するという考えで支援することにしました。

    ハバロフスク州政府は、このほど『漁労禁止』を解除しました。同政府報道局が3月10日、アムール河川環境観測の結果として発表したところによれば、「特別の有毒物質の濃度は水中 氷の中、水底の堆積層にも限度を越えていない。魚類に入っている農薬濃度は容認し得る濃度より低い。汚染物質の濃度は平年通りの数字を超えない。」と述べ、漁労禁止解除の根拠としています。

    しかし、『漁労禁止』が解除されても、「汚染の風評や健康への懸念から、とても買ってもらえない」し、以前から都市圏の拡大による漁労圏の減少やアムールの汚染で、漁獲量の減少が続いており、漁労で暮らすことはできない状況です。

    むしろ懸念されるのは、『漁労禁止』解除により問題の深刻さが薄められ、汚染防止の取り組みが放棄され、アムールの汚染が一層進むことです。さらに心配されるのは、空腹を癒し、タンパク源を確保するために健康への不安を抱えながらも、アムールの魚を食べざるを得ない村人が大勢いると言うことです。村人の健康が気がかりです。一刻も早く、漁労に代わる収入の道を創らなければなりません。

    「支援募金」は、現在9万5千円ほどが寄せられていますが、『漁労禁止』解除を受けて、今後一層募金活動を強めて行きたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

     クラブとしては、ここ数年「アジア・シルクロード音楽フェスティバル」を一緒に行ってきた、モンゴル、ウィグル、ネパール、イランその他のアーチストの協力で6月13日、目黒区民センターホールでチャリティコンサート(前頁に要項)を実施するほか、下記のとおり、「国際ボランティア貯金」の助成の申請を行いました。また7月14日から21日まで、シカチアリャン村などを訪ねて、少数民族への理解親睦協力を促進するエコカルチャーツアーを実施します。普段はなかなか体験できない野趣あふれる旅行となります。ぜひご参加ください。

    ▼「シカチアリャン村の自立支援のため国際ボランティア貯金に助成金の配分を申請」
     <援助事業の概要>(今年度)
    イ)魚をとるしかなかった漁民に対して、村にある古代の岩絵や伝統芸能への興味から訪れる観光客に販売する民芸品の製作のための研修、作業と販売のための場所を確保、運営する村営企業を立ち上げる ロ) 村民の生活維持のため、魚に代わるタンパク源としての大豆栽培などの農業の可能性を探る土壌・気象環境調査を実施する ハ)300人の村に一基しかない深井戸を増設し、生活用水と産業用水を確保するため故障している深井戸を修理し、水を供給する。

    ▼「自立支援・理解・親睦・協力促進―アムール・沿海州エコカルチャーツアー」
    ナナイ、ウデゲ ロシア極東地域の先住民族村訪問
    旅行時期 2006年7月14日~21日の8日間 旅行費用は8日間で215,000円です。
    【シカチャリアン生活維持と自立支援(仮称)募金】送付先郵便口座名:ユーラシアンクラブ 口座番号:00190-7-87777通信欄にシカチャリアン支援と明記してご送付下さい。
    皆さまのご理解とご支援をお願い申し上げます。
    【写真】汚染と下流少数民族の苦境を伝える東京新聞


ロシア・アムール少数民族村自立支援チャリテイ・コンサートのご案内

アムール川汚染による危機からの脱却をめざすシカチアリャン村(ナナイ族)を支援しましょう

    シカチアリャンの危機を救い、自立の努力を支えようと
    ユーラシアのイラン、モンゴル、ウイグル、ネパール、そして日本からアーチストが熱演

    出 演:ライ・ハスロー(馬頭琴演奏家、作曲家 中国・内モンゴル)梅木秀徳(ホーミー、口琴演奏家 日本)アブライテイ(タンブル演奏家、中国・新彊ウイグル) シャーサーバリー・ハミド(サントゥール、ネイ(笛)演奏家イラン)パンチャ・ラマ(パンスリ(笛)演奏家 ネパール) タラー(中国古筝、中国・内モンゴル)

    村では漁労に頼らない暮らしを創ろうと、ペトログリフ(岩絵)観光を中心に、お土産品などの製作販売で活路を見出そうとしています。とはいえ、人口300人の寒村にはなんの蓄積もなく、支援が求められています。
    本コンサートは、収益金を村に寄付し、自立の一助にするために行うものです。皆さまのご参加とお力添えをお待ち申し上げます。

    チケット:前売り1,800円 当日2,200円 チケットぴあでも扱います。
    日  時:6月13日(火曜日)18:00開場 18:30開会 
    会  場:目黒区区民文化センター 目黒区目黒2-4-36
    最寄り駅:JR山手線 東急目黒線目黒駅徒歩10分 バス権ノ助坂下車徒歩5分
    お問合せ:ユーラシアンクラブEL/FAX:03-5371-5548 E-MAIL:paf02266@nifty.ne.jp
    お申し込:郵便振替で口座名ユーラシアンクラブ 口座番号00190-7-87777までシカチアリャン支援コンサートとしてご送金下さい。
    【写真】ロシア極東地方と日本列島 シカチアリャン村はハバロフスクの北東70㎞


エネルギー革命の時代に希望を~「ユーラシア大地の学校」開設に向けて 第二十二回

独露同盟が復活:したたかに進むパイプライン政治 報告者:若林一平

    2006年の新年早々、とんでもないニュースに驚いた。折しも厳寒の最中にロシアがウクライナへの天然ガス供給を止めたのである。

     【モスクワ1日共同】ロシアとウクライナの天然ガス供給をめぐる紛争で、ロシア政府系天然ガス独占企業ガスプロムは1日、ウクライナ国内向けの天然ガス供給を停止したと発表した。インタファクス通信によると、ガス輸入を担当するウクライナ国営企業ナフトガスもこれを確認、同国を通じた欧州向けガス供 給に影響が出る可能性があるとの見方を示した。消費量の約30%をロシアから輸入しているウクライナも深刻な経済的打撃を受けるとみられ、2004年末 の「オレンジ革命」による親欧米のユーシェンコ政権誕生以来ぎくしゃくしていた両国関係の一層の悪化は必至の情勢となった。

    ロシアもずいぶん乱暴なことをするものだ。これでは国際的な信用にも傷がついてしまい、肝心の今後のビジネスにも影響が出かねないのでは、などと思った。そこでいつものようにぼくの探求癖に火がついた。これは何かあると。

    2005年12月10日、ニューヨークタイムズ発。退職したばかりのドイツのシュレーダー元首相がロシアの天然ガスの巨人であるガズプロムの子会社の 「北ヨーロッパガスパイプライン会社」の会長に就任した。この会社はロシアのペテルスブルクの近くからバルト海を経由して直接ドイツと結ぶ天然ガスパイプラインを2010年までに建設する。

    これまで東欧を経由していたパイプラインがバルト海を通ることによって、中途に介在する国々の意向と無関係にドイツとロシアが直接商取引をできるということである。ロシアのウクライナに対する強硬姿勢には根拠があったのである。ガズプロムのCEOであるアレクセイ・ミラーは次のように言っている、 「パイプライン会社の出発はロシアとドイツおよびEUとのエネルギー分野での協力関係における新時代の始まりである。」ちなみに海底ケーブル敷設会社に はドイツのBASFらが資本参加している。

    かつてドイツとロシアは東欧を分割した前歴がある。ヒトラーとスターリンの時代である。現ドイツはソ連崩壊直前に東ドイツをクレムリンから超安値で買っている(1990年、独ソ包括条約)。傀儡国家とはいえ東欧の優等生といわれたひとつの国家がこうも簡単に売り買いされるものかとぼくも驚いた記憶がある。新独露同盟はここから始まっていたのである。

    したたかさにかけてはプーチンも負けていない。石油は既にエクソンなどロックフェラー(米国)系が深くロシアに食い込んでいる。サハリンに来ているのも米国系のエクソンだ。そこで天然ガスにはヨーロッパ系を導入して競わせる算段か。プーチンは、天然ガスでは中国とも取引してヨーロッパ一辺倒ではないというメッセージを送っている。

    さて、わが小泉君はどうか。無理をしろとは言わぬが、気がついてみると国際的なゲームからは相当に遠いところに来てしまっているようだ。
    【写真】ドイツとロシアを直接結ぶパイプライン会社の会長に就任したシュレーダー前独首相(http://www.mosnews.com/)


心中穏やかならなぬ年の旅はじまり「極寒のトラは氷結したアムール川に潜んでいた!」2 河野眞一

    到着とともに遅めの昼食が始まった。川が汚染される前に捕ったと言うチョウザメのフライや鮭の燻製をはじめ、この冬を越すために欠かせない村の貴重な食料で惜しみなくもてなされ、複雑な心境の内にも食事は夜遅くまで続いた。ウオッカの乾杯を繰り返し時はゆっくり流れるほどに酔いも深まる。しかし、4月にはアムール川の氷が融けはじめ村の春は悪夢とともに訪れるのかと思うと胸中は穏やかではない。

    窓の外は雪、月明かりを受けながら粉雪が銀色に静かに舞っている。大野さんは持参した北海道産の丸々として優良な大豆の種を手にして、自らの経験談を交え大豆栽培について説き始めた。春がきて、耕して種を蒔く。短いシカチャリアンの夏の季節に大豆が育ち収穫することできれば、豆腐をはじめ味噌や醤油、納豆などの原料にできると力説している。うまくいけば2年間禁猟されるアムール川の恵みの一部を代行できるだろし、農耕技術を少しずつ身につけていけば野山に自生する薬草などの人工栽培も可能になってくる。

    また、村に豊富に存在するおいしい水資源を活用した観光資源の開発なども実現できれば村の自立の道も開けてくるなど、大野さんの熱弁は夜更けまで続く。村人の眼差しも次第に真剣になり大野さんの提案に期待を寄せ始めた様子が伺える。翌11日、今日も見渡す限り真っ白。遥か彼方にアムール川の岸辺が霞で見える。上流から下流まで延々と見渡せるその氷上に漁民の姿は一人も見当たらない。

    絶景に感動するのも束の間ニトロベンゼンで汚染され、息を潜めたアムール川を横目にしながら昼前の学校を訪問した。門川町の文化少年団・アドベンチャークラブの子ども達からのプレゼント「日本のからくりおもちゃ」に、子ども達が駆け寄り喜んで遊ぶ姿を見つめていると、ふと門川で熱心に工作する子供たちの姿が重なって見える。シカチャリアンの子ども達がお礼に村の伝統舞踊を披露してくれた。「かどがわ」と「シカチャリアン」世界を隔てた子供達の伝統文化や芸能が「心の掛け橋」となった感動的瞬間の余韻を残しながら、学校の一室にある村長執務室を訪門した。

    大野さんはユーラシアンクラブキャンプの土地税をはじめ維持管理に必要な費用の支払いを済ますと、早速今回の旅の大きな目的の一つであるアムール川の汚染とシカチャリアン村の現状と将来に向けた自立の道などについてニーナ村長を囲んで長時間に渡る熱論の中で分かったことは、ロシア政府は向こう24ヶ月アムール川における漁労を禁止して生活の道を閉ざしたものの、それに変わる救済策は何ら提示されていないと言う現実。まして、当事者である中国政府の無策に等しい態度には特に憤りを覚える。しかし深刻な環境汚染が中国の経済成長の大きな制約となっている中で、河川の70%が汚染されていると言う現状を聞く。時中国政府の正当な責任遂行が危惧される。

    総額3兆円を越える日本政府の対中国ODA(政府海外援助)は一体何を求めてきたのだろうか?こういう時こそODAのあり方を真剣に見直し、共に友好且つ真摯な国際協力に努めるべきである。アムール川の悠久の歴史と寄り添って生きて来た善良なる先住民族の暮らしは今、風前の灯である。この灯を消さないためにも、中国政府の有害物質汚染よる積極的な対策と自立支援は急務であることは論を待たない。

    一方、日本の対応はまるで蚊帳の外にいるかのように見えて腹立たしい。すでに網走から知床に流氷が辿り着き人々は流氷祭りなどを楽しんでいるが、クリオネは大丈夫だろうか?アムール川からもたらされ北の漁場を潤す豊富な資源は汚染されていないのか?4月には融け始めるというアムール川の有毒物質の汚染がやがて日本の海流にも悪影響を及ぼしはしないか日本の政府や日本人は心配しなくて良いのだろうか?(以下次号)
    【写真】だるまあそびに興ずる子どもたち 撮影:河野眞一


北京で開かれた中・米NPO検討会に参加 井出晃憲

    3月19・20日の両日、中国社会科学院社会学研究所、アメリカ研究所およびイェール=中国協会の主催で中・米NPO検討会が北京にて開催されました。

    私は、クラブ会員の一之瀬毅さんに紹介していただいた社会学研究所の羅教授から招待を受け、クラブのスタッフとしてこの検討会に参加しました。会議にはアメリカからの5人の発表者を含め30人ほどが参加しました。まずアメリカにおけるNPOの法整備や対政府関係などの概況が紹介され、次いでアメリカと中国におけるNPOの成立と発展の具体的事例が報告されました。

    中国の事例としては、河川の環境保護に取り組む「雲南緑色流域」という団体が発表を行い、活動に際して管理・開発・広報の3つの柱が重要であることを指摘しました。NPO活動で先んじるアメリカの概況を踏まえ、これから中国において自らNPOをいかに発展させていくべきかということが議論されました。
    【写真】会議の模様、右列奥が羅教授


クラブスタッフ井出晃憲さん(北京在住)も寄稿した『京大探検部【1956‐2006】』出版

    クラブスタッフを務める井出晃憲さんも寄稿した『京大探検部【1956‐2006】』(新樹社)が先ごろ部の創設50周年を記念して出版されました。井出さんは寄稿文で、探検に興味を持った大学学部時代からクラブで活動する現在に至るまでの心境などについて綴っています。詳しくはこちら http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4787585479/qid%3D1143052760/250-9388863-9643421(アマゾン)


新大久保駅で救助のために亡くなった李秀賢さんを偲ぶチャリテイ・コンサート開かる 池田源一郎

    5年前の2001年1月にJL新大久保駅で日本人を助けようとして亡くなった李秀賢さんを偲び、ご両親を励ますチャリテイ・コンサートが、犠牲現場に近いベアーレ新宿で開かれました。主催は在日韓国人歌手の白玉仙(ペク・オク ソン)さん。「息子の遺志を継いで親善に努めるご両親を応援したい」と開催。

    韓国からご両親も出席しました。東京新聞、読売新聞でも紹介されましたので300人近くが集まり、李さんと関根さんのお二人の追悼歌「新大久保悲歌」(作詞 白玉仙 作曲:酒田 稔)を白さんが熱唱すると会場内から嗚咽がもれました。

    ご両親は、事故後に寄せられた見舞金を基に、日本語を学ぶアジアの就学生対象の基金を創設。今回の収益金30万円は李秀賢奨学基金に寄付されました。この李秀賢奨学基金で既に234名のアジアの若者たちが日本に留学しています。

    【白玉仙さんの略歴】5歳の時に来日、夫との離別の後は廃品回収業などをしながら息子を二人とも医者にした肝玉かあさんです。歌手として活躍。お年寄りや身障者を招待してのコンサートは既に47回を数えます。カラオケスナックも経営。
    【写真】コンサートの様子 撮影:池田源一郎


燕京通信 大興安嶺紀行 その4 白色地帯も今は昔 井出晃憲

    マンクイ鎮に着いて、とりあえず駅前の旅館に今晩の宿を取ってひと落ち着きする。高校生くらいのまだ少年の面影を残す若者と相部屋になった。宿代は一人5元だ。通りに出てみると近くに登山用階段のついた小高い山が見える。まだ午後4時だからとうぶん明るいし、山に登って景色を眺め、ついでに近くの川で釣りでもしてくるか。宿の自転車を借りてさっそく出かけた。

    その山は凝翠山という。標高980mで693段の階段をひたすら登る。頂上に着く頃には汗だくだくだ。頂上にはさびれた電波塔があるほか何もない。私のほかに一組のカップルも登ってきたが裏の茂みに消えていった。頂上からは南に眺望が開けている。遠方には大興安嶺の山並みが望め、鬱蒼とした森林が続いている。眼下には町の名の由来であるマンクイ河が流れており、少し西の下流で南から流れてくるビストラヤ(激流)河と合流している地点が見える。

    そうした広大な緑色の風景のなか、足下の山裾にマンクイの町並みの灰色と地肌がむき出しになった木材置き場の黒色が広がっている。おそらく、60年前の探検隊の隊員もこの山頂からの景色を眺めただろう。そして、今と比べてその景色のカタチは変わらずとも足下の灰色と黒色はなかったはずだ。何しろ白色地帯だったのだから。町並みを見渡すと、正確にはわからないが少なくとも万単位の人口を擁しているだろう。ずいぶん開発したものだなあ。

    山から下りて今度は河に向かう。マンクイ河とビストラヤ河の合流点だ。マンクイ河について、その上流を渡河した探検隊の支隊の一員は以下のように記している。「カラマツにまじって、みずみずしい広葉樹がスクスクとのびて、河辺林をつくっていた。…この河辺林の印象は強烈だった。ドロやケショウヤナギ、ヤナギ類の木立ちは、…あおあおともえていた。すばらしいシラカンバの新緑。ゆたかな河の流れは、すこしにごってはいるが、うつくしく林内をうねっている。河辺林は、うっそうと小暗くしげっているにもかかわらず、なんとあかるく、ゆたかに感ぜられたことだろう。

    日の光は、あお葉をとおして、水面にキラキラとおどった。かつてなかったほど、小鳥たちが数おおくさえずっていた。野地坊主の青草も、眼のさめるようにふさふさと、水べにのびしげっている。…だれもが夢中になったのも無理はない。」さらに、私が訪れた合流点を通過した本隊の一員は、「その上流で支隊をよろこばせたのよりも、いっそうすばらしい河辺林をもち、申しぶんのない川原の砂地をもっていた。ただ、夕ぐれにおそいかかるカの大群だけが、どうすることもできないゆううつであった。」と記している。河の素晴らしさについては引用文からも十分うかがい知れると思う。けれども、私が訪れたのも夕刻だったのでカの大群に出くわし、釣りどころではなくホウホウの体で引き上げた。

    帰りの道すがら、営林署の運営する自然展館を見つけた。開館時間は過ぎていたけれど、北京から来た旨を伝えると学芸員の湯さんは喜んで案内してくれた。動植物の展示が充実した立派な施設だった。この町は1964年に開発が始まったこと、今は自然保護に力を入れていることなどを丁寧に説明してもらった。

    夕食を終えて宿に戻ると、自分の寝床が勝手に変えられていた。客が増えたので部屋ではなく宿の広間の簡易ベッドで寝てくれとのこと。先客なんだからちゃんと部屋に泊めて欲しいのに。常連客優先のようだ。広間では深夜まで他のお客がテレビを見るのでなかなか寝られない。それでも他のお客とけっこう楽しくお酒を飲みながら夜を過ごした。(続く)
    【写真】マンクイ鎮の町並み 撮影:井出晃憲


編集後記:群馬県桐生市市民文化会館で5/1/8に「アジア・シルクロード・ミュージック・キャラバン」が行われます。イランのシャーサバリ・ハミドさん、ネパールのパンチャ・ラマさん、梅木秀徳さんなどが出演します。企画構成は大野遼さんです。チケットは2,000円。全席自由です。お申し込みは0277-22-9999まで。(高橋)


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