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2010年1月

2010年1月24日 (日)

ユーラシアンクラブからのお知らせ

特別総会・新春交歓会のご案内

 ユーラシアンクラブは、3月7日(日)午後1時から、東京・信濃町駅ビルの飲食店「ジョン万次郎」で、特別総会・新春交歓会を開催いたします。「日本人クラブの脱皮」「心のシルクロードの終着駅である日本橋や愛川町(神奈川県)での地域拠点型活動の推進」などを掲げ今後10年の活動の考え方を提案し、さまざまなシルクロードゆかりの団体の皆様との交流を行います。

 催しの概要はこちら「invitation.pdf」をダウンロード

 会場案内はこちら「chart.pdf」をダウンロード

 催しの目的等はこちら「purpose.pdf」をダウンロード

 

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2010年1月 3日 (日)

ニュースレター第125号 3月7日(日)にユーラシアンクラブの特別総会・新春交歓会

ユーラシアンクラブニュースレター第125号2010年1月1日


3月7日(日)にユーラシアンクラブの特別総会・新春交歓会

    シルクロードアカデミーのパイオニア・加藤九祚先生の米寿の挑戦を応援
    新年あけましておめでとうございます。
    この数年、「日本人クラブかのらの脱皮」などを模索してきたユーラシアンクラブは、これまでの議論を踏まえて役員の改選、機構改革、活動計画を報告する特別総会と新春交歓会を下記の日程と場所で開催することになりました。事務所も「日本橋移転」の予定です。

    総   会:2010年3月7日(日)午後1時から2時まで
    1 新体制と機構改革紹介 新理事紹介
    2 活動計画 日本橋プロジェクト 愛川プロジェクト
    3 その他 300人の村・シカチアリャン展示計画等

    新春交歓会:午後2時から4時まで
    会   費:4,500円
    カラテパ仏教遺跡調査出発直前の加藤先生を囲み、モンゴル、ネパールなどアジア・シルクロードの音楽演奏(ライハスロー、パンチャラマなど予定)
    会   場:JR中央線信濃町駅ビル1階「ジョン万次郎」
    共   催:モンゴル:ブフ・クラブ イーグル・アフガン復興協会
    ◎「加堂九祚一人雑誌 アイハヌム209号」発売中!2千円


「愛川町シルクロードのまちづくり実行委員会」が発足。愛川町に要望書を提出

    私は,神奈川県愛川町に転居して4年余り立ちましたが,その間,転居に協力していただいた大塚憲二さんをはじめ,四井恒夫さん,杉原信義・美智子夫妻,高橋英明さん,そして地元愛川町の瀧亀久男さん,繊維産業会の落合勝二さん,八木一郎さん,相原静夫さんら愛川町で地域振興のために地道に努力されている方々の援助を得て,愛川町のまちづくりの方向について模索し,私自身は愛川町のグランドデザインをまとめながら活動を続けてきました。

    その結果,ユーラシアンクラブ・愛川サライと財団法人繊維産業会,愛川町西部地域まちづくり推進委員会や町会議員,有志の皆さんと協力し,まちづくりのための協力団体「愛川町シルクロードのまちづくり実行委員会」を発足させました。

    今後,愛川町らしい個性溢れるまちづくりのコンセプトやビジョン,まちづくりに参加する地元の人の輪を形成しながら,活動を積み重ねていくことになりました。団体の代表には,繊維産業会の元理事長であった小島條太郎さんが就任しました。

    シンポジウム,フェスティバル,交流会,小学校での芸術鑑賞などこれから数年間は,子供たちに地域の歴史や誇りとアジアの情報を伝え,地元の方々の顔の見えるまちづくりを志して努力したいと考えています。引き続き皆さんのご理解ご支援をお願いいたします。(大野遼)


●ツアーメンバー募集中「NORIKO学級とナマンガン温泉浴そしてサマルカンド8日間」

    出発2月17日 旅行費用 198,000円
    ウズベキスタンのフェルガナ地方・リシタンにある日本語学校「NORIKO学級」を支援するリシタン・ジャパンセンター(RJC)スペシャルツアー。

    NORIKO学級を訪ね、子供達との交流をする他、ウズベキスタンでは珍しい天然温泉のナマンガンでの温泉浴そして世界遺産のサマルカンド観光など魅力的な企画が盛りだくさんです。

    添乗員はナマンガンの日ウズ合弁企業に通算7年間の駐在経験のある寺尾近三氏。豊富なウズベキスタンの経験と流暢なロシア語で皆様をご案内いたします。

    お問い合わせは(株)ロシア旅行社・担当加藤(電話:03-3238-9101、ファクス03-3238-9110)まで。
    URL:http://www.russia.co.jp/uzb_casia/teraospecial_0217/teraospecial_0217.htm


ユーラシアンクラブ文化講座

    ○1月のダリー語講座
    1月8日(金)19:001月22日(金)19:00-21:00
    アフガニスタン、タジキスタン、ウズベキスタンの一部でも通用し、ペルシャ語とも理解しあえるダリー語の実践的講座
    講師:江藤セデカ(NPO イーグル・アフガン協会理事長)
    受講料1 ヶ月5,000 円
    問い合せ電話:03-5366-6451 FAX:03-5366-6452

    ○「加藤九祚シルクロードアカデミー」1月の講座日程は未定
    土曜日15:00 から加藤先生著作の「アイハヌム」全9巻を教材にした本格ゼミ
    講師:加藤九祚(中央アジア研究の第一人者・民博名誉教授)
    受講料1 回2000 円(資料代・懇談費別)
    問い合わせpaf02266@nifty.ne.jp 090-3814-5322(大野遼)


他団体情報 アフガン研究会『特別企画』

藤井さんに聞く:目で見たアフガニスタンの現実

    藤井さんには、2007年11月にもお話をして頂きましたが、再びアフガニスタンの貴重なお話をうかがう機会がやってきました。藤井さんは、これまで約2年間、赤十字国際委員会アフガニスタン事務所で勤務していましたが、このたび一時帰国します。この機会に、厳しさを増しているアフガニスタンの現状について、実際の見聞に基づいてご報告をお願いします。
    研究会代表 上岡 弘二

    日時:2010年1月23日14時-16時半
    場所:パオ驢馬駱駝9F(JR東中野西口から徒歩3分、地図参照)会費:1000円なお、ご出席の場合、準備の都合上、以下の事務局に電子メールか電話又はファックスでご連絡を下さいますようお願い致します。
    アフガン研究会事務局 柴田紀子 電子メール: k-nsh@js2.so-net.ne.jp Tel&Fax: 047-477-1801
    驢馬駱駝 164-0003 東京都中野区東中野2-25-6 PAO COMPOUND 9F

    藤井 卓郎(ふじい たくろう)さん略歴
    1998年イスラマバード国立近代語学大学ウルドゥー語科修了。ペシャワール会、在アフガニスタン日本大使館、アフガニスタン合同選挙管理機構、JVC(日本国際ボランティアセンター)パキスタン地震救援事業勤務、そして、JVCアフガニスタン事務所駐在代表を経て、赤十字国際委員会アフガニスタン事務所でパシュトー語通訳。


他団体情報 日本シルクロード文化センター主催
シルクロード講座とシルクロードサロンのお誘い

    シルクロードの歴史に興味をお持ちの方、シルクロードを旅したいと思っている方、日本シルクロード文化センターでは、4月から毎月1回、シルクロード講座とシルクロード・サロンを開催しております。

    ラクダに乗った隊商が沙漠を行き交うイメージとはひと味違う、シルクロード諸民族の歴史、現代シルクロードの真実をともに学び、そこに住む人々の生活や文化を楽しみませんか。どうぞお気軽にご参加ください。

    1.新シルクロード講座「ゾロアスター教とイスラム教の結婚と離婚」
    講師:加藤九祚先生(シルクロード研究者)
    加藤九祚先生は今年で87歳。国立民族学博物館名誉教授、専攻はシベリア・中央アジアの文化史。定年退職後は、ウズベキスタンのテルメズ遺跡の発掘に関わり、再三、ウズベキスタン政府からも表彰されており、テルメズ名誉市民にもなっています。
    1月9日(土)(13:00~14:30)
    参加費(資料代):1,000円
    場所:みんなの広場小田急線和泉多摩川駅徒歩5分 狛江市東和泉2-20-12 えのき2番館103 Tel:03-3488-3981

    2.シルクロードサロン(14:30~16:00) 「ウイグルのお正月」
    日本在住のウイグル人ご夫妻のお話を聞きながら新年会を行います。参加費:500円(飲み物実費)
    講座、サロンのみの参加も出来ます。今回はサロン開始の時間がいつもと違いますのでご注意ください。 

    <問合せ・申込み>Tel & Fax: 03-3480-4478(野口)E-mail:silkroad-j@mtj.biglobe.ne.jp  
    <当日問合せ> 080-5483-6740(野口携帯)
    日本シルクロード文化センターホームページ:http://silkroad-j.lomo.jp/


文化を尊敬する魂を育む'中央アジア研究団体
「オクサス学会」設立

    12月14日,東京・霞ヶ関の東海大学交友会館で,中央アジアに興味のある団体関係者が集まり,アフガニスタンと中央アジア中央を東西に貫流するアムダリア川の古名「オクサス」を冠した学会を立ち上げた。

    発起人は,日本におけるシルクロードアカデミーのパイオニア,加藤九祚・国立民族学博物館名誉教授,前田耕作・アフガニスタン文化研究所長(和光大学名誉教授),古曳正夫・元シルクロード月刊雑誌「ハルブーザ」主宰者。

    万年雪におおわれた世界の屋根パミールの氷河に発して砂漠に消えるオクサス川(アムダリア)を広義の中央アジアの象徴として学会の名前として採用,中央アジアに興味を有する人は国籍を問わず誰にでも門戸を開き,年に一回「濃密な研究発表会」を開催し,紀要「シルクロード」の発行を目指す,としている。

    発起人の一人,古曳正夫さんの話
    「パミールから出て、東から西にカラクム砂漠を潤すアムダリア。その流域は古来重要な歴史の発信地だった。しかし、その北半分はソ連圏だった。欧米の学者が足を踏み入れることができないでいた70年間に、ソ連圏の学者が実績を重ね、いまロシア語の論文の山を築くに至っている。

    加藤九祚先生はこれらの論文を誰でも読めるように翻訳しようと志を立てられ、2001年に「一人雑誌・アイハヌム」を創刊された。一年に一冊ずつ、今年で9冊目になった。この功績により、今秋、加藤先生は関科学技術振興記念財団からパピルス賞を授与された(ニュースレター123号参照)。

    最近になって,これまで、英仏語で研究してこられた前田耕作先生と、ロシア語で研究してこられた加藤先生たちの間で、「一緒に研究しようじゃないか」という機運が湧きおこり、新たな学会が設立されることになった。

    そして素晴らしいニュースは、加藤先生と前田耕作先生が呼びかけ人となるこの学会が極めてオープンな性格であることだ。つまり学者だけでなく、われわれ素人も、外国人も参加でき、ジャンルも問わない。年に一度発行される学会誌「シルクロード」には、素人からの投稿も掲載される。来春早々、会員募集要項を発表するので注目してほしい」


特集:お正月

    日本でお正月は「暦」に基づき決定されている「年の初め」=元日
    であるが,人々の暮らしの時間を刻むこの「暦」は,国家、民族、宗教の歴史や季節感等を反映して実にさまざま。実は民族の数ほど「暦」があるといってよいほどだ。絶対的な「時」をどう理解するかは深遠なる哲学や宇宙観に属するテーマであり,人々は太陽や月,星の運行から「時間」を刻むことを始め「暦」が誕生した。

    「時間」の起点となる「紀元」についても,「キリスト紀元」「ローマ建国紀元」「ヒジュラ紀元」「仏滅紀元」「神武天皇紀元」「檀君紀元」と,国家民族宗教の特色を反映している。

    日本では,神話の時代からの時間を刻んでいるのが「神武天皇紀元」。有史以来採用した「暦」の数は,朝鮮半島の百済経由で7世紀に伝わった元嘉暦をはじめ9つ。日本海対岸にあったツングース系の渤海国から伝わった宣明暦862-1685の利用が最も長く実に823年間使用された。

    現在のグレゴリオ暦は,福沢諭吉なども推奨していたもので明治5年12月3日を明治6年1月1日にすることでそれまでの天保暦より一ヶ月早められ決定された。天保暦(旧暦)の一月は,グレゴリオ暦(新暦)の二月にあたり,現在の日本人は江戸時代の日本人より一ヶ月早く新年を祝うことになった。一ヶ月早い「正月」である。

    またグレゴリオ暦は,1582年にローマ教皇グレゴリウス13世がユリウス暦を改良して制定されたという経緯から,西欧の植民地の拡大とともに世界に広がった。日本は幕末明治の文明開化の時代に,中国暦から西洋暦に移行。欧米化,脱亜入欧の結果を示している。

    従って,この「正月」が,年に一回人々が祝う非日常のハレ(晴れ,晴れ着や晴れ舞台,良いものを着て,よいものを食べる年の節目・節句)の日だとすると,アジアは日本が浮かれているほどにはグレゴリオ暦の「正月」を祝っていない。

    [中国のお正月]
    日本が採用した旧暦が誕生した中国も1912年,中華民国成立(清朝滅亡)以来グレゴリオ暦を使用しているが,旧暦の正月を春節と呼んで,花火や爆竹を鳴らし最もにぎやかに祝っている。

    年越しに餃子など異なることもあるが,新しい服を着て,肉や魚の豪華な食事をして,家族団欒や親戚との交流,年長者へのあいさつをするなど日本とかわりはない。中国のほか,台湾・韓国・北朝鮮・ベトナム・シンガポール・マレーシア・インドネシア・ブルネイとモンゴルでは,正月といえば,旧正月のことである。

    グレゴリオ暦では,一月中旬から二月中旬にかけて。ちなみに,グレゴリオ暦2010年1月1日は,旧暦では2009年11月 17日(まだ11月です)。旧暦のお正月は,グレゴリオ暦では2010年2月 14日です。

    中国では何億人単位で帰省ラッシュが起こる,農作業開始前の中国伝統の農閑期の祭りが原点です。冬至から春分にかけての中間点を立春・節分(2月3日,4日頃)として一年の始まりと考えたのが「正月」の意味です。また,元日を祝わないお正月もある。

    [ネパールのお正月は秋] 
    仏教を創始した仏陀の誕生地ルンビニのある国だが,宗教の主流はヒンドゥー教。今年はネパール・ビクラム暦2066年(来年四月まで)で,4月14日が元日だったが,国民的な「お正月」はダサイン。

    ヒンズー教の千手観音のような姿のドゥルガという女神を祝う,盆と正月,収穫祭が一緒になった一年で一番大きなまつり。9月から10月の満月までの二週間,学校は休みになり,会社も一週間休み。働きに出ている人は田舎に帰り,店は閉まるので,町はがらんとした状態になる。

    人々は鶏,ヤギや野牛を犠牲にして普段食べられない肉を食べ,昼間から酒も飲む。着飾って,家族の団欒や親戚兄弟同士行ったり来たり交流し,観光に行ったり,普段できない好きなことを楽しむ。長老からティカと呼ぶ真紅の飾りを額につけてもらい,お年玉ももらう。(以上パンチャラマさん情報)

    [アフガニスタンの"お正月"は,グレゴリオ暦でいうと、3月21日]
    ナヴルズ(新年のお祭り)と呼ばれる、ゾロアスター教の時代にも遡る、長い歴史ある祭りです。学校も、このとき新しいクラスがスタートします。

    近年では、アメリカなど外国の部隊や支援者等とともに、クリスマスや、1月1日を祝う風習も流入し、アフガニスタンでも、これらを祭日として捉える人々も増えてきました。アメリカやヨーロッパ、インド、パキスタンなど、難民として暮らした外国で、このような祭日に馴染んだ人々が帰国したことも、影響しています。しかしやはり、私たちにとっての "新年"は、冬が去り緑の復活する3月21日です。

    アフガニスタンは昔から、農業を中心に暮らしてきました。しかし内陸アフガニスタンの冬は、緑が全て消え、大変厳しいものです。3月下旬、積もった雪の嵩が次第に低くなり、芽吹を迎える喜びは、ひとしおです。

    新年の朝は、干葡萄、杏、胡桃、アーモンド、ピスタチオなど7種類の果物のジュースを飲みます。アフガニスタンには、たくさんの種類の葡萄があります。1~2日かけて、干葡萄を水でもどして、ジュースにします。近隣のイラン、タジキスタンなどでも見られる習慣です。

    冬の間の食べ物は、肉も野菜類も、乾燥させた保存食ばかりなので、このジュースはとても新鮮で、新年~年の生まれ変わり~を祝う物です。

    新年には、白い鶏や魚も頂きます。白は縁起が良く、魚は、人の心身をきれいにすると考えられているからです。お墓参りも、新年の習慣の一つです。水、果物や花を供えて、祖先を偲ぶとともに、幸せを祈ります。婚約した人は、婿の方が魚と菓子を持って、嫁の家に挨拶に訪れます。

    農業を営んできた私たちにとって、緑とそれを育む雨は、とても大切です。新年には、これに因んだ風習が、いくつかあります。例えば新年には、緑を飾ります。麦の苗を作って飾るのです。降雨と麦の順調な育成への願いが表れています。この麦で、後日、胡桃や砂糖と一緒に擂って粉にし、お菓子を作ります。粉にするのは大変で、男性も含めた大勢の家族の作業です。

    緑の多い一年になってほしい、という願いが込められた、占いもあります。女性がブランコに乗って飛び降り、その降り立った場所で、新しい年に、雨が十分に降るかどうかを占うのです。緑は人の幸せと深く結びついており、芝生を結び合わせ、願い事をしたりもします。

    四つ葉のクローバーは、日本と同様、アフガニスタンでも、幸運を呼ぶとされています。ただし日本とは少し種類が違い、私たちはこの三つ葉を、塩で食べます。毎年、先祖のために新しい苗を植えたり、種を蒔いたりする習慣も、緑を愛で、緑に対する深い思いの表れです。

    畑など屋外の仕事ができず、家の中で絨毯織りなどの仕事をする冬の終わりは、1年の終わりでもあります。新年を迎えるまでに、家の掃除や料理など、全ての準備を終わらせ、"元日"は、普段のような仕事はしません。

    新年のジュースを飲んだり、ピラフを頂き、家族と過ごします。イランやアフガニスタン西部の方は、10日以上お祝いが続きますが、カブールなど南部では、正月祝いは、もっと短期間です。

    3月には、未だ新しい野菜はないので、前年に取れた野菜を保存したものを頂きます。秋にとれた野菜や果物は、干したり漬けたりして保存し、冬の間の食料にします。ほうれん草、玉葱、ニラ、茄子、にんにく、大根など種類は豊富です。

    大根などの漬物は、それぞれの家庭の味があり、平和だった頃には近所どうし、様々な民族の間に何の境界もなく、皆が自分の家の漬物を配ったり、もらったりしていました。自分の家で取れた物を、皆がモスクに寄進し、旅人はモスクで、必要な食べ物を得ることができました。

    必要なものを互いに供給しあう、思いやりに満ちた社会でした。長く続いた戦乱のため、現在アフガニスタンの子どもたちは、昔から私たちの社会にあったこのような豊かさを知りません。とても残念なことです。

    日本のお正月の少し後に、アフガニスタンでも、新年を迎えます。私たちの新しい年は1389年です。アフガニスタンに平和が訪れる年になるよう、願っています。(談・江藤セデカ〔特定非営利活動法人イーグル・アフガン復興協会 理事長〕)


環境とエネルギー(3)
気候変動枠組条約締約国会議(COP15) 町野 勤

    新年明けましておめでとございます。今年も環境とエネルギーに関する情報を送っていきます。昨年は、エネルギー問題については、書く余裕がなく、今年はがんばって情報を集めて書いていこうと思います。

    特に環境問題の中で地球温暖化対策とエネルギー問題はCO2排出量削減とエネルギー資源及び技術の問題で密接に関わってきます。今、これを書いているとき、コペンハーゲンで開かれていた11日間に及ぶ第15回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP15)が終了しました。

    2年前のバリ会議で、世界全体の長期的な温暖化ガスの排出削減目標を含めた「長期的協力行動に関する共通のビジョン」を目的とする「バリ行動計画」と2年間の交渉のプロセス(バリロードマップ)が合意され、その2年間の総決算となる今年、9月に行われた気候変動サミットでも、COP15で包括的な国際気候変動協定づくりが合意されるよう呼びかけられた。

    COP15では、長期的協力の4つの主要要素である、緩和・適応・資金・技術及びキャパシティビルディングについて議論されましたが、私が環境省で担当しているCCS(CARBON  CAPTURE AND STORAGE=炭素回収貯留)技術のCDMへの認可も検討され、当初の予想とは裏腹にEU、日本、オーストラリア、産油国の推進国のCDM認可への期待に対し、中南米、島嶼国などの反対で次回会議への検討保留が決まりました。

    COP15全体でも先進国と途上国で対立し、中国の削減目標の提示と日本や先進国への削減目標への批判など各報道で報じられたために際立ちましたが、その他にIPCC議長から気温の上昇を2.0-2.4°Cの範囲内に収めるには2015年より遅くない段階で世界の排出量がピークを迎える必要があると指摘があり、

    各国の発言の中、中央アジアでは、キルギスタンとタジキスタンは、山岳生態系の問題に対応することの重要性を強調し、カザフスタンが2020年までに1990年比で15%排出量を削減するとの約束を打ち出した。

    また、アフガニスタンは、適応に対する資金供与は政府開発援助(ODA)に追加的であり、これとは別のものでなければならないと強調した。また、気候変動に関する国際先住民フォーラム(INTERNATIONAL NATIVES PEOPLES' FORUM ON CLIMATE CHANGE)は、長期的協力の中に国際人権基準、特に国連の先住民の権利宣言を含めるよう求めた。

    そして、COP15の正式発表は、まだ休日なので読んでいないので、以下新聞記事から。
    「COP15は、19日、地球温暖化対策の新たな枠組み(ポスト京都議定書)に関する政治合意(コペンハーゲン合意)について、「合意に留意する」との扱いで、条件付きで採択し、閉幕した。

    主要国がまとめた合意案に対し、同日未明から始まった本会議で途上国の一部が反発。採決は全会一致が原則のため、賛成国のみに合意の効力が及ぶ形で決着した。(時事通信社 2009年12月19日)

    COP15は、仕事で関係していたので、注視していましたが、ワイン生産家が、ブドウの生産が気候変動によって影響を受けるということから、ワイングラスを鳴らすパフォーマンスがあったが、酒づくりが趣味な私にとって別の意味(ワインも醸造過程で少しCO2を出す)で考えさせられた。

    次回は、再生可能エネルギーの各技術(私の光合成細菌を使った有機廃棄物からの水素生産の研究も含む)について報告したいと思います。
    今年は良い年であります様に。(続く)


他団体情報

シンポジウム「日本の森林バイオマス利用を進めるには~日本林業復活のための提案」のご案内

    日 時:2010年1月15日(金)13:00~17:30
    会 場:早稲田大学大久保キャンパス(理工)63号館03-04会議室(副都心線西早稲田駅に直結 高田馬場駅より徒歩15分)
    主 催:NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN) l共 催:W-Bridge資料代:1000円(BIN会員は無料) http://www.waseda.jp/jp/campus/okubo.htm

    13:05~13:25 「木質バイオマス利用をめぐる状況と林業」 伊藤幸男(岩手・木質バイオマス研究会会長/岩手大学)
    13:25~13:55 「現在の林業の概況と課題」 熊崎実(日本木質ペレット協会会長/バイオマス産業社会ネットワーク理事)
    13:55~14:20 「国産材が使われない理由」 田中淳夫(森林ジャーナリスト)
    14:20~14:45 「日本林業を復活させるためには」 加藤鐵夫(元林野庁長官)
    14:45~15:10 「日吉森林組合の取り組み」 湯浅勲(日吉森林組合参事)
    15:10~15:35 「日本林業復活への道筋」 相川高信(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)
    15:50~17:30 パネルディスカッション「日本林業復活のための提案」

    コーディネーター:泊みゆき(バイオマス産業社会ネットワーク理事長) パネリスト:岡田久典(早稲田大学W-Bridge運営委員)、伊藤幸男、熊崎実、田中淳夫、加藤鐵夫、湯浅勲、相川高信 コメント:金谷年展(慶應義塾大学大学院政策メディア研究科教授)
    *時間および講演タイトルは一部変更になる可能性があります。

    ※日本で利用可能なバイオマスの半分以上が、森林由来のバイオマスですが、廃材の利用が進んだ現在、今以上の利用拡大には、林業振興が不可欠です。

    ※日本の木材需要は、人工林の更新分でまかなうことができ、木材価格も低いにもかかわらずなぜ、日本の木材自給率が2割程度なのか、日本の林業を産業として自立させるためにはどのような政策が必要でしょうか。

    ※日本の林業の状況について理解を深めつつ、個別の政策にとどまらず、総体としての林業をめぐる状況を捉えながら、どのような方策を行うべきかについて、林業および木質バイオマスの最前線に立つ方々が議論します。多数の方々のご参加をお待ちしています。

    ※参加を希望される方は、下記よりお申し込みください。http://www.npobin.net/apply/


●気になるユーラシア短信Ⅰ

チベット高原の急速な気温上昇、原因にインド亜大陸の「黒色炭素」 NASA

    【12月16日 AFP】米航空宇宙局(NASA)のウェブサイト「Earth Observatory」は15日、チベット高原(Tibetan Plateau)の急速な気温上昇と氷河融解の原因と目される大気中の黒いすすの広がりを今年の8月から11月まで追ったコンピュータによるシミュレーション映像を公開した。

    環境科学者らはこの黒いすすを、黒色炭素(ブラックカーボン)とも呼ぶ。画像が表しているのは今年の9月26日の黒色炭素のエアロゾル光学的厚さ(aerosol optical thickness)。エアロゾル光学的厚さは大気中の粒子が日光を吸収する量に基づいて大気汚染の程度を測る尺度だ。

    画像では、黒いすすが大気中に多い場所が明るく表示され、少ない場所は薄い紫色で表されている。黒いすすが付着して黒くなった雪や氷河は、日光を吸収して温度が上がる。

    チベット高原では、地球温暖化だけでは説明できない速度で気温上昇と氷河融解が起きていた。NASAと中国の科学者らは最近、チベット高原の5つの氷河の氷コアを調査し、主にインド亜大陸を中心としたアジア地域の上空の汚染物質による黒色炭素の密度が1990年代から急激に高くなっていることが、恐らくチベット高原の急速な気温上昇と氷河融解の原因だと確認した。

    【参考】Nasa Earth Observatoryの「黒色炭素」の画像ページ
    http://earthobservatory.nasa.gov/IOTD/view.php?id=41854


●気になるユーラシア短信Ⅱ

中国人農民受入計画とカザフスタン

    旧ソ連中央アジア諸国への中国人の流入は、各国で軋轢を生んでいる。キルギスでは、バザール(市場)への中国商人の進出に抗議運動が度々発生、タジキスタンでは、同国と中国とを結ぶ幹線道路が建設中だが、中国人労働者と地元労働者とのいざこざが絶えない。

    中央アジア随一の穀倉地帯であるカザフスタンでは、12月4日、ナザルバエフ大統領が中国への農地貸与計画をほのめかすと、ただちに反対の声が上がった。野党指導者は、計画は中国人の移民を招き、カザフスタンの「中国化」につながると警告、中国大使館前で小規模な抗議集会を行った。一方、政府関係筋は、中国への農産物輸出の経済効果を強調している。

    中央アジア諸国、とくに民間レベルで反中感情が存在することは否めない。中国資本の進出に伴う労働者・農業従事者の流入を中国による中央アジア植民地化の布石とする疑心暗鬼も見られる。

    しかし、中国を現実的なパートナーと見る傾向も強まってきていることも確かである。旧ソ連崩壊後、中央アジア諸国は、欧米の積極的援助がEUの中央アジア版=域内統合を促すものと期待した。

    だが、現実は期待からは程遠く、現在も経済危機の只中で欧米諸国は国内問題で手一杯である。他方、中央アジアをエネルギー調達地と見なすだけでなく、同地域に対してインフラ整備や借款にも力を入れ始めた中国に注目が高まりつつある。(2009年12月17日ラジオ自由ヨーロッパ)


編集後記:400年余り続く地下資源依存型社会とその社会を維持するための植民型帝国の拡大の結果のCOP15。「排出ガス」が温暖化の原因とすれば,地下資源依存型の先進国の責任が大きいのは明らか。途上国を巻き込んで「排出量削減」で世界の首脳が顔をそろえるのではなく,「太陽と水」をテーマにした循環型エネルギーの開発こそ人類を未来につなぐ課題であると協議して欲しい。地下資源依存国からの脱皮。日本の再生の鍵の一つもこの方向にある。チベットや日本海側の山林を襲う汚染物質はその象徴だ。政治的リーダーシップをこうした戦略的ビジョンで発揮してほしい(お)


発行:特定非営利活動法人ユーラシアンクラブ 発行人:大野遼 住所:〒151-0053東京都渋谷区代々木2-13-2 第一広田ビルTEL:03-5371-5548 FAX:046-285-4895 E-MAIL:paf02266@nifty.ne.jp ホームペイジ:http://eurasianclub.cocolog-nifty.com/ 郵便振替:00190-7-87777ユーラシアンクラブ。お振り込の場合:ゆうちょ銀行0一九店 当座預金 0087777 ユーラシアンクラブ 会費、ご寄付はこちらへお願い致します。ご連絡はメールかファックスを希望します。
2010 01 01 Non Profit Organization Eurasian Club

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2010年1月 2日 (土)

ニュースレター第124号  「300人の村の世界遺産 シカチアリャンの岩絵展」成功へ

ユーラシアンクラブニュースレター第124号2009年12月1日


イオルの確保は日本の課題 大野 遼

    現在進んでいる新しいアイヌ政策の中では精神文化を尊重する政策が第一に重要だと考えられているということを前号で紹介した。しかし,私はアイヌの生活圏,領域の確保が最も重要だと考えている。

    大規模な植民による生活圏の消失,「改名」「改俗」「言葉の強制」,困窮と離散,民族文化や誇りの消失―と,出口の見えない「同化の百五十年」の末に動き始めたのが,国連を通した「先住民族の10年」プロジェクトで、その二期目のプロジェクトの中で結実したのが,「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(平成19年9月13日)だった。

    日本におけるアイヌ理解や国の政策,法整備も急速に進展し,平成9年アイヌ文化振興法制定,平成20年アイヌ民族を先住民族とすることを求める衆参両院決議につながった。

    「同化」が始まるのは,国家や民族や宗教的優勢な勢力,あるいは社会の優勢な勢力が,人(民族)をその人(民族)の気持ちや意思を顧みず,その仲間に囲い込むことを「宣言」したときである。

    民族としてのアイヌが「同化」そして困窮と差別の不幸に襲われるきっかけとなったのは,大きく三つの段階があったと考えられる。たくさんの渡来人を受け入れて国家の体制を整備していた大和の勢力が東国支配に乗り出した7-8世紀。

    蠣崎氏(松前藩)が,秀吉から朱印状,家康から黒印状を得てこれを後ろ盾に北海道渡島半島に拠点を築き,蝦夷地の経済圏支配に乗り出した16,17世紀。

    そして第三段階が幕末。アメリカやロシアの開港(通商)要求に対して「アイヌは日本人」「アイヌの住む蝦夷地(和人の呼称)は日本領土」と宣言,樺太や択捉以南の島を「日本領と主張(宣言)」した19世紀半ばである。

    人間関係でも,友達であるかないか,恋人であるかないか,仕事仲間であるかないかなどは,同意や契約が基本であるが,近代国家の国境線の画定はほとんど,優勢な国家の宣言と国家間パワーポリティクスで決定される。そして先住少数民族の不幸や領土問題が残される。「同化」のスタートである。

    この「同化」の過程で一番問題視されるのは,民族として自立できる生活圏を保障しなかったことだと思う。精神文化の消失はこれらの過程の結果論であり,生活圏の確保がその基礎になるべきだ。生活圏の中には,領域,子供の教育,経済振興などが含まれる。

    「報告」では、「今日的な土地・資源の利活用によりアイヌ文化の総合的な伝承活動等を可能にするよう配慮していく」ことが重要としてはいるが、聞き及ぶアメリカの先住民族が確保している生活圏の領域に比べて不十分なレベルにある。

    さらに,「近代国家」の基礎は選挙に基づく代議制の国会が重要だと言っても,北海道を中心として、明治維新前後のアイヌ2万人、和人の移民開拓者を中心として10万人であったのが、現在では和人562万人(平成18年)と言われるほど植民人口が激増した結果,アイヌの要望を直接反映する仕組みが「多数決民主主義」では限界がある。

    報告は「国会等におけるアイヌ民族のための特別議席の付与については、国会議員を全国民の代表とする憲法の規定等に抵触すると考えられることから、実施のためには憲法の改正が必要となる」と指摘している。国家の民主主義の原罪の解決には、超法規的考え方も必要だと思う。

    「瑞穂の国」などと語り、戦後の農地解放でも,現在進行中の農地制度改革でも,農地(畑地、水田)政策一本やりだ。森(山)や川、海につながる循環する自然資源との共生は大きな課題になってきている。

    イオルと呼ばれたアイヌの伝統的生活空間の確保は、アイヌだけでなく、現代日本人の大きな課題だと思う。先日我が家を訪問した浦川治造さんから、日本海側の荒廃する森林の復興に一緒に取り組もうと提案された。

    大陸からの汚染物質の飛来が樹木を大量に枯らせているのだという。私は、アイヌが、日本における多文化共生と自然との共生のリーダーとして活躍してほしいと思う。私は浦川さんのようなアイヌが国会議員となったらいいのではないかと考えている。


厳寒の映画撮影現場に行ってきた 井出晃憲

    10月末から11月初旬にかけて中国へ出かけた。ひょんなことから現在撮影中の映画のロケ現場を取材することになったからである。

    映画のタイトルは、『アルグン河右岸』という。同名の原作が女流作家の遅子建により書かれ、同書は第7回茅盾文学賞を受賞し、中国では名の知れた作品である。

    アルグン河はアムール河の源流の一つで中国とロシアの国境となっており、その右岸とは中国側を指す(3ページ地図参照)。エヴェンキ族は対岸のロシア側にも居住しており、この題名は民族が分断されているということも暗に示している。

    物語は、同地に居住するエヴェンキ族の最後の女酋長の一代記であり、年老いた彼女が昔を回顧するという筋立てになっている。戦前、戦中そして社会主義建設と激動の時代に翻弄されながら生き抜き、民族の生活も遊牧から定住へと大きな変貌を遂げた、そのような内容の映画である。

    今回は、監督やスタッフ、そしてキャストもほとんどが少数民族であり、エヴェンキ族を主人公にしたこの映画に対する意気込みは相当なものである。監督もこの映画を撮ることで今後の自分の映画へ姿勢が変わるだろうと述べた。

    そして、これまで長年に渡って少数民族の支援を行ってきたユーラシアンクラブに、ぜひ映画の日本での上映を実現できないかという打診があり、私が代表として取材に出向いた次第である。

    撮影は内モンゴル自治区ハイラルからさらに北方の根河市で行われている。私は以前夏に大興安嶺を旅したおり現地を訪ねたことがあり、盛夏の美しい緑が印象に残っていたが、今回はまだ秋というのに厳寒の候となっていた。

    取材の当日は、日中は屋外でエヴェンキ族の宿営地の移動のシーン、夜は屋内のセットに作られた天幕の中のシーンだった。日中でも零下15度ほどであたりは一面雪景色である。

    小さな子どもたちも含めてエヴェンキの一族がトナカイを連れて移動していくというシーンを撮り、私は寒さに震えながら半日ほど見学していたが、それでも実際の映画では5秒ほどのシーンに過ぎないと聞き、映画の撮影の大変さを垣間見た思いである。

    夜には零下20度ほどにまで冷え込んだ。屋内に天幕のセットを設けて室内の撮影をした。その合間に監督や主演女優へのインタビューを行った。ダフール族である監督はもともと画家であったが、黒澤明の本との出会いがきっかけで映画の道に進んだという。

    主演女優は浅野忠信主演のチンギスハーンの映画でハーンの母親役を務めたとのこと。その他にも、当日はいなかったが、スーチン・ガウアーという中国の国民的女優も出演する。中国ではおそらく評判になるだろう。

    この映画は、言わば"文部省推薦"のような、子供から大人にまで少数民族について考える機会を与えてくれる教育的な映画である。できることならば、ぜひ日本での上映を実現させてできるだけ多くの人に観ていただきたいと願っている。


―1万2千年前に遡る北東アジアの古代絵画―
太陽信仰と生命樹が守る少数民族の聖地
「300人の村の世界遺産 シカチアリャンの岩絵展」

    一度でよいので,この「300人の村」を訪ねてほしい。そして感想を聞かせてほしい。
    アムール川の岸辺(右岸)の丘の上に展開するシカチアリャン村のことである。
    ロシア式の古い木造住居は傷み,崩れて,マイナス35度になる冬にも隙間風が入る。
    道は,雨にさらされて,削り取られ,でこぼこで,曲がりくねり,坂道が多い。

    道端では,ぼろぼろの衣服を来た男たちが酒の臭いを発散しているのが顔を見ただけでわかる。数年前にこの村を訪れた友人から,麻薬に手を染めている者もいると知らせてきた。私は,この村に18年間通ってきた。しかしある理由で2年ほどこの村に行っていない。私はこの村が大好きである。

    酒臭い男たちと話してみたらよい。言葉が通じなくても声をかけて欲しい。相好を崩し,愛嬌のある笑顔が返ってくるだろう。彼らは単に仕事が無いだけなのだ。村には,酒びたりの男たちをきつく叱るおばあさんもいる。
    この村に未来があることは子どもを見ればわかる。

    一度でよいので,村の小学校,保育園を訪ねてほしい。そうすれば感想も変わるだろう。
    きちんと挨拶を交わす,屈託の無い笑顔。スポーツクラブ,文化クラブの活動も活発で,郷土史博物館も充実している。子どもが大切にされていることは,子どもを見ればわかる。

    シカチアリャン村の眼前をゆったりと流れるアムール川(マンゴー川;モンゴルの語源か?)。川の岸辺に転がる火山岩に刻まれた百数十点にのぼる岩絵は,生命樹や太陽神話と深く結びついている。

    村の子どもたちは,世界樹とも言われる命の木(生命樹)の枝の先に止まった鳥がその魂を運ぶことで誕生したと考えられている。

    昔,地上は三つの太陽に照らされ,大地は溶けてやわらかく,生活できなかった。英雄が現れて弓矢で二つの太陽を射落とすと,太陽は砕け散って無数の星となり,生き物の痕跡は冷えて固まった岩絵となって残された。

    マンゴー川(アムール川のこと)で生まれた子どもたちは,スキーを履き,オモロチカと呼ぶ舟で移動する自然と共生した暮らしを営み,家族や氏族には,トラや熊,狐などのトーテムが知られている。トラや熊はモハ(支配者)であり,人々はモハの子孫となった。人々は昔靺鞨(モハ,モヘ)と呼ばれた民族の子孫である。

    一度でよいので,この村の歴史や文化を紹介する展覧会に来て欲しい。そうすればこの村の印象も変わるだろう。
    人々は,隋・唐代には黒水靺鞨と呼ばれ,12世紀になると中国北半を支配した金王朝を建て,さらに後には清朝を起こした女真や満州と呼ばれた。

    人々は今,ロシアの先住少数民族としてナナイと呼ばれている。
    この村は女性が支えている。そして村の未来を憂えているのも女性だ。
    女性たちは,民族の言葉を伝え,踊りや歌を伝え,伝説を伝え,岩絵を守っている。
    一度でいいので,ハワイやパリ,ロンドンのツアーの代わりに,この村への旅行をしてほしい。
    この村は,日本から一番近い先住少数民族村である。(3ページ地図参照)

    ・アムール川の漁労や狩猟で生計を立てていたが,アムール川の汚染で漁労ができなくなった。
    ・金帝国の昔は,原生種の大豆も栽培していたが,今は農業技術も機械も無い。
    ・世界遺産に匹敵する「シカチアリャンの岩絵」は,アムール川にさらされ風化や港湾開発で破壊が進んでいる。
    ・守られて育った子どもたちが小学校の教師の資格を取ったが,仕事が無い。

    村の女性に支援が必要だ。未来をになう子どもたち,農業や養殖漁業,観光のノウハウを教えたい。
    研修には,日本語の教育が必要だ。
    日本人観光客が訪ねても困らない,日本語のわかる若者がいる村になって欲しい。

    村への支援の第一歩となる展覧会は3年後の開催を目指し、現在,国立民族学博物館,川崎市民ミュージアム,横浜ユーラシア館,札幌学院大学の研究者そして村の人々や北方少数民族協会と相談している。ご期待ください。(大野遼)


環境とエネルギー(2)
気候変動による氷河湖の決壊洪水被害 町野 勤

    前回のニュースレターで報告したアラル海と同様にアフリカ大陸中央のチャド湖でも面積が過去40年間で9割減少し、20年後には消滅のおそれがあると国連食糧農業機関(FAO)が先月報告していました。これは人口増加と気候変動が原因となっている様です。

    今回は、この気候変動の影響として、氷河湖の形成と決壊による被害をテーマにします。地球温暖化による氷河の衰退は、近年キリマンジャロをはじめヒマラヤなど世界の山岳氷河で報告されていますが、それと同時に溶け出した水が、くぼ地などに溜まって氷河湖を形成しています。

    氷河湖は、1950年代ごろから増え始め、国際総合山岳開発センターによると、2007年では、約二千数百個の氷河湖が存在すると報告されています。

    そして、この氷河湖の決壊による洪水被害として、1994年にブータンのルナナ地方で氷河湖決壊洪水が発生した際には、旧首都プナカで押し寄せた洪水で21名が亡くなり、川沿いの家屋や歴史的建造物であるゾン(寺院兼役所)が破壊され、農作物や家畜なども被害を受けるという大災害が起きています。

    また、筆者がユーラシアンクラブのサマーキャンプツアーで一昨年、訪れたキルギスにおいても天山山脈にある氷河でも昨年7月に氷河災害があったとの報道があり、腹下しと伴に遥か彼方に聳える天山山脈をバックに大凧が舞っていたのを想い出し、再訪の気持ちに駆られています。以下新聞記事から。

    「中央アジア・キルギスの天山山脈で昨年、山岳氷河が解けてできる『氷河湖』が急速に拡大し、形成が始まってから約二ヶ月半で決壊したことが、総合地球環境学研究所(京都市)の奈良間千之研究員(自然地理学)らのグループの調査でわかった。

    一般的に、氷河湖が形成されてから決壊するまでは、数十年かかるとされており、グループは「地球温暖化が招いた氷河災害の極めて危険な事例だ」と指摘している。

    標高3700m地点の『ズンダン氷河湖』。衛星画像の分析などによると、昨年5月13日頃に現れ、縦約370m、幅約160m、深さ約25mまで拡大し、その後、7月24日に決壊。土石流が発生して約15km離れた村近くで住民3人が死亡し、道路や畑、家畜の飼育施設などにも被害が出た。

    天山山脈にある氷河は約15,400km2とされている。同氷河湖がある山脈内陸部は、1971~2002年で氷河面積が8%も減少、山脈北部では80~00年、夏の平均気温が約0.9度上昇したというデータもある。今回の決壊も、気温上昇により氷河が解ける量が急激に増加した影響とみられるという。

    氷河湖の決壊は、ヒマラヤ山脈などでも起きるが、今回のように短期間で決壊した例はないという。

    ズンダン氷河湖が決壊した二日後に現地入りした奈良間研究員は「泥が一面に広がり、壊れた車が放置されるなど、生々しい光景に災害の怖さを痛感した。対策は難しいが、今後も調査を進めていく必要がある」と話している。(2009年8月20日 読売新聞)

    この件について、外務省の「中央アジアにおける環境協力」をテーマとした今年2月に行われた第3回東京対話の第2セッション「気候変動が中央アジアの環境に与える影響」で奈良間千之氏の報告があった様です。

    また、前述した、「ブータンの氷河湖決壊洪水」に対し、わが国でも、2008年度に採択された「地球規模課題対応国際科学技術協力(外務省、文部科学省とJICA、独立行政法人科学技術振興機構(JST)が連携して実施するODAの新しい枠組み)のプロジェクトの一つとして、「ブータンヒマラヤにおける氷河湖決壊洪水に関する研究」が開始されています。

    ここ数年、地球温暖化がまさに肌で感じられる様な気がして、それと同時に来月のコペンハーゲンの気候変動枠組み条約締約国会議に向けて世界もよりアグレッシッブな動きになってきて、その渦中で環境省に派遣勤務している私も翻弄されてきています。(続く)


他団体情報

バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)第93回研究会ご案内

    日 時:2009年12月10日(木)18:30~20:30
    テーマ:「地域のメタン発酵施設を成功させるポイント」
    講演者:薬師堂 謙一氏(農研機構中央農業総合センターバイオマス資源循環研究チーム長、NPO法人九州バイオマスフォーラム理事長)
    会 場:環境パートナーシップオフィス(東京都渋谷区神宮前5-53-67 コスモス青山B2F)地下鉄表参道駅より徒歩5分・JR他渋谷駅より徒歩10分http://www.geic.or.jp/geic/intro/access.html#epo
    参加費:BIN会員 無料、一般 1000円

    ※日本での、特に行政主体の地域でのメタン発酵施設は、これまで多くの課題をかかえてきました。安定的な原料の調達や運営方法、熱や電力の利用先に加え、最大の課題は消化液の処理だと言われています。

    農研機構中央農業総合センターバイオマス資源循環研究チーム長の薬師堂謙一氏は、熊本県山鹿市バイオマスセンターなどで、家畜糞尿や生ごみといったウェット系バイオマスをメタン発酵させ、発生したメタンガスを利用するメタン発酵施設の計画・運用に携わってこられました。

    山鹿市バイオマスセンターは、地域のメタン発酵施設での成功例として、各地からの視察者が多数訪れています。経済的・エネルギー的に安定的に稼動できるメタン発酵などのバイオマス施設計画のポイントはどのようなものなのか、地域の特性に合わせて、どのように運営するべきか、薬師堂さんより伺い、参加者の皆様とも活発なディスカッションができれば幸いです。

    多数の方のご参加をお待ちしています。参加を希望される方は、下記よりお申し込みください。http://www.npobin.net/apply/


11月15日に神奈川県立ふれあいの村で「モンゴル文化ナーダム」盛会で終了

    11月15日,神奈川県愛川町半原にある神奈川県立愛川ふれあいの村紅葉祭で「モンゴル文化ナーダム(モンゴル祭)」が開催されました。

    モンゴルブフ(相撲)クラブの代表バーボルドさんが、友人の力士16人を引き連れ、オフィス遊牧民の栗原広之夫妻らモンゴル人協力者によるモンゴル料理、モンゴル音楽、福島達大氏らによるゲル(樋口直正さん提供)の組み立て、モンゴルドキュメンタリー映像を上映するなどして、モンゴル文化を楽しんでいただこうという企画。

    地元愛川町のさまざまな食材、文化を体験する催しの中でもメーンイベントの一つとして大盛り上がりで、子供たちの中にはモンゴル相撲に参加したり、ゲルの前で子供用のモンゴル衣裳を着て記念写真をとり楽しそうにしていました。

    ハリフさんの馬頭琴の演奏やモンゴル版相撲甚句の紹介は、周りを取り囲んだ人たちからたくさんの拍手をいただきました。

    催しの中心となったモンゴル相撲は、トーナメント方式で決勝戦までの相撲をバーボルドさんが解説しながら進行し、汗をびっしょり掻きながら組み合う、土俵の無いモンゴル相撲の真剣勝負に感動、勝者が一人決まるごとに拍手を送り、CDのモンゴル音楽も会場の雰囲気を盛り上げました。優勝はダンバ、準優勝はホヤガーさんでした。

    また野外のモンゴル相撲と平行して、ロッジの中で上映されたドキュメンタリー映画「学校に行きたい」は、ゴビ砂漠でヤギを放牧する母子家庭の子供の心の叫びに涙する人が多く、映像製作者のアロハンさんとの質疑応答では、感動で絶句しながらこの状況をどうしたらいいかと質問するモンゴル人学生にしーんとする場面もありました。

    会場準備から、モンゴル料理の販売、宣伝、カンパとそれぞれ分担して助けていただいた、薄信子さん、浅見摩紀さん、坂田安里さん、地元西部地域まちづくり実行委員会のボランティアを含め、「愛川サライ」の多くのスタッフ、テレビ、ガスコンロ、ガスボンベなどを提供していただいた繊維産業会、モンゴル相撲の決勝賞金をカンパしていただいた八木一郎さんや相原静夫さん、差し入れをいただいた小島総一郎町議会議員、半原小学校長を紹介いただいた渡辺基町会議員など多くの方から援助いただきました。

    愛川町のシルクロードのまちづくりの第一歩と考えています。来年春には、アジアシルクロードフェスティバルを愛川町文化会館で実現したいという希望を持っています。ご支援よろしくお願いいたします。(大野遼)


●気になるユーラシア短信Ⅰ

ロシア依存脱却へ―ロシアのエネルギー専門誌「ロスエネルギー」編集長ミハイル・クルチーヒン【モスクワ=大木俊治(聞き手)】

    中央アジアはかって経済的にロシアに大きく依存していたが、資源を武器に輸出先の多様化を進めるなど自立を強めている。欧州や中国の進出で、この地域でのロシアの立場は以前に比べて弱くなっている。

    例えばロシアとカザフスタン、トルクメニスタンは07年、天然ガスのロシア向け輸送量強化のため既存のカスピ海沿岸パイプラインを改修し、併せて新線も建設することで合意したが、この計画は全く進んでいない。実現にはトルクメン国内を横断するパイプライン建設が必要で、同国はロシア政府系天然ガス企業「ガスプロム」に費用負担を求めているが、財政難の同社が応じていないためだ。

    一方でこの横断パイプライン建設にドイツやオーストラリアの企業が協力を申し出ている。トルクメンは条件で双方と駆け引きしている。

    ロシアは4月、パイプライン事故の原因を巡りトルクメンと対立し、ガス輸入を停止したが、トルクメンは中国やイランへの輸出でしのぎ、強気の姿勢を崩していない。

    カザフはウランという武器を持つ。ロシアは今後の原発増設のため、カザフからの輸入に頼らざるを得ない。カザフの石油部門には欧米だけでなく中国の企業が進出。協力相手の多様化が進む。

    ガスプロムなどロシアのエネルギー企業は「外交の武器」と言われるが、実際は外交政策を利用しながら目先の利害で動いている場合が多い。しかも経済危機による資金不足や経営の非効率で競争力は低い。中央アジアは欧州、中国以外にもイランやトルコなどさまざまな取引相手があり、ロシアとの間でも当面は有利な駆け引きを続けるだろう。((2009年11月13日毎日新聞)


●気になるユーラシア短信Ⅱ

中国と中央アジア五カ国の貿易額が激増

    2009年ASEM経済フォーラムによりますと、中国とカザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、トルクメニスタンら中央アジア五ヶ国との外交関係樹立以来、中国とこれら国々との経済協力と貿易は大きく発展し、貿易額は元の50倍近くに達しています。

    1992年.中国とこれら五ヶ国との貿易額は僅か5億ドルあまりでしたが、2008年にはその50倍近くの252億ドルに達しました。

    なお、2007年末までに、中国のこれら五ヶ国への投資額は86億ドルに達し、それは資源、機械、自動車と農業など多くに分野に及んでいます。(中国国際放送局11月17日)


編集後記:トルクメニスタンの天然ガス資源にEUが猛アタック中だと最近聞いたばかり。短信など見ているとアフガニスタンにアメリカが強い興味を持つ理由もわかる。烏孫の昔から中央アジアはアジアのパワーポリティクスの草刈場だった。ここで護国と現世利益の神々が誕生したのもうなづける。人類がアジアに文明を誕生させて三千年。そろそろ、地下の魔物にそそのかされない、太陽と水を大切にする循環型社会への共同のテーブルができないかと思うこの頃です。それは「東アジア共同体」ではない。(お)


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ニュースレター第123号 加藤先生の一人雑誌「アイハヌム」が、第7回パピルス賞の受賞作品に決定

ユーラシアンクラブニュースレター第123号2009年11月1日


加藤先生の一人雑誌「アイハヌム」(東海大学出版会、2001~2009、毎年1冊刊)が、
第7回パピルス賞の受賞作品に決定

    (財)関科学技術振興記念財団が、毎年、アカデミズムの外で達成された学問的業績、あるいは学問と社会を結ぶのに貢献した業績に贈るパピルス賞の第7回人文・社会科学書部門の受賞作品として、加藤先生が2001年から毎年発刊している「アイハヌム 加藤九祚一人雑誌」を選考した。

    選考理由として『・・・「中央アジアの歴史と文化と考古学」と唱われているように、ロシア・中央アジアの希少な論文・書籍を紹介し、時に加藤が行っている発掘の報告をも掲載する。

    誌名の『アイハヌム』は、東方ヘレニズム最東端の都市遺跡の名称である。アレクサンドロス大王の東方遠征は東方にギリシアの文明をもたらした。チュルク語でアイは月、ハヌムは女性の尊称、この美しい遺跡の名は、「東西文明の交流」を願う加藤にとって、誌名としてふさわしいと思われたのである。

    雑誌は巻を重ねることによって、一つのシリーズとして「文明の交流」に貴重な役割を果たしている。一人の人物による継続的な努力の結晶として珍重すべきものと思う。』と記しています。

    加藤先生は、バクトリアから中央アジアへの南門というべき位置を占めるアフガニスタンとウズベキスタンの国境の町テルメズ市で11年前現地に加藤の家を購入し、世界の考古学者が注目しているアムダリヤ川右岸の仏教遺跡カラテペで発掘調査を開始。

    来年から三年計画の新たな学術調査計画にも着手、貴重な中央アジアを中心としたユーラシアの学術書「一人雑誌アイハヌム」を毎年単独で発行して9号目。

    今年米寿を迎えるも、旺盛な仕事ぶりで、青雲の志とどまることを知らずといった今日この頃です。すでに大仏次郎賞、南方熊楠賞など多くの賞を受賞してきておられますが、学術文化の架け橋を任じてきた加藤先生にはふさわしい賞がまた一つ増え、誠にうれしい限りです。

    この「アイハヌム」をテキストとして今年1月から始まった「加藤九祚シルクロードアカデミー」の生徒を中心として、新年早々米寿の祝いも兼ねた集いを実現したいものだと思います。(大野)


国家の「同化」政策は人間の思いやりを不安定にした 大野 遼

    前号で「先住民族の問題は国家の民主主義の原罪である」と書いた。この認識が、国連先住民族の宣言やこの宣言に促された日本の国会決議、そして内閣官房長官の諮問機関「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」報告書(案)の背景にあるように思う。

    昨年全会一致で可決された日本の国会決議には「我が国が近代化する過程において、多数のアイヌの人々が、法的に等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事実を、私たちは厳粛に受け止めなければならない」

    「全ての先住民族が、名誉と尊厳を保持し、その文化と誇りを次世代に継承していくことは、国際社会の潮流であり、また、こうした国際的な価値観を共有することは、我が国が二十一世紀の国際社会をリードしていくためにも不可欠である」とある。

    私なりには、国家民族宗教を超えて、特に少数民族にウェートを置いて民族の共生、自然との共生を模索することを掲げてユーラシアンクラブを立ち上げた趣旨にもかなう、人類の未来に悲観していたものとしては少しほっとした決議でもあり、日本が今後進むべき道筋を戦略的に示すものとして意味があると思っている。

    この決議に基づいて発足したのが「有識者懇談会」でありこの夏まとまったのが「報告書(案)」である。

    ビクトリア・タウリ・コープス国連先住民族問題常設フォーラム議長が、「国連宣言」採択(2007年9月)に際して発表したコメント「この宣言を効果的に遂行できるかどうかで、国家そして国際社会全体が先住民族および個人的人権を保護し、達成するための姿勢が試される」に対応した日本における政策的具体化のための第一歩となるのが「報告書(案)」である。

    「報告書(案)」は今後の政策的「基本的な理念」の第一に「アイヌのアイデンティティの尊重」を掲げている。その理念の拠りどころとして憲法第13条の「個人の尊重」が規範であるとした上で、「国がその復興に配慮すべき強い責任があるアイヌの文化の中でも、とりわけ、アイヌ語の振興などを含む精神文化を尊重する政策については強い配慮が求められる」と指摘している。

    私が親しくしているアイヌの人々は、「アイヌ語」で会話できる人が意外に少ない。子どもの頃から使用することがあまりなかったためだ。その大きな理由が差別的社会にあった。

    生活圏を奪われ、困窮を余儀なくされ、教育も十分受けることなく育ったことやアイヌではない日本人の無理解な態度を懸念した両親があえてアイヌ語を教えないということも多かったためである。

    アイヌであることに誇りをもてない社会環境は旧「土人保護法」(明治32年制定)などの名称に象徴され、平成9年に「アイヌ文化振興法」制定まで存在した。つい最近のことである。

    新法に基づいて「アイヌ文化振興・研究推進機構」が発足して以降、アイヌ文化振興事業が拡充し、アイヌを誇りある民族の自称として使用する人、特に若い人が増えた。

    私が敬意を抱いてお付き合いさせていただいている浦川治造氏は、子どものころから働きづめで苦労の連続だったが、「最近の日本人は古い文化や暮らしを知らなさ過ぎる。私が教えないと」と語る分け隔ての無い思いやりの気持ちで接する人で、どこに行っても、その地に生きた人々や命ある全ての霊を祀り、アイヌではない日本人の間に多くの友人がいる。

    浦川さんのような人がアイヌには大変多く、アイヌ文化振興法を制定させた故萱野茂元参議院議員のようなアイヌの地位向上のために努力した多くのアイヌの先人がアイヌのアイデンティティを守ってきた。

    国家に影響力を持つ優勢な民族が、改名・改俗そしてその言語を強制する近代国家・植民地国家の「同化政策」がこのアイデンティティをゆるがせる大きな原因となっている。

    「国家と先住民族のパートナーシップ」に反する「同化」は人類社会の持つ、多様性、個人の尊厳という人類のもっとも大事にするべき思いやりや「友愛」の気持ちを不安定にする原因となって差別を助長した。(続く)


『太陽のコンサート2009』
生きてこそ―響く、子ども達の想い―

    2009年12月1日(火)、モンゴル国ダルハン市にある孤児院「太陽の子ども達」で暮らす子ども達による、来日コンサートがおこなわれます!

    今年も11名の子ども達が来日します。日本で延べ1万人を動員してきたモンゴルのエンターテイナーたちに是非会いに来てください。子ども達がプロ顔負けの技術で、モンゴルの伝統舞踊、馬頭琴、琴、長唄、軟体芸などを披露します。

    日時:2009年12月1日(火)
    会場:18:00 開演:19:00 
    場所:文京シビック大ホールアクセス:後楽園駅徒歩3分・春日駅直通
    チケット代金:一般 3,500円(前売り 3,000円)学生 2,500円(前売り 2,000円)WEB販売は「一般」のみとなります。そのためWEBで購入した学生の方は、当日、受付で学生証の提示をお願いします。1,000円キャッシュバックします。

    ※小学生以下のお子様には、株式会社イデアインターナショナルの可愛い雑貨プレゼント。
    主催:NGOゆいまーるハミングバーズHP:http://yuimar.org/太陽のコンサートHP:http://yuimar-concert.org/
    お問い合わせ:stom@yuimar.org 080-2614-4403(電話受付:水・木 12:00~19:00/金・土・日 10:00~16:00)


<他団体情報>医療・教育の面でアフガニスタン復興支援を行う NGOカレーズの会より バザーのお知らせ

    11月4日~11月20日バザー品大募集!
    皆様からの温かいご協力をお願いします

    日用品(タオル/石鹸/洗剤/入浴剤など)、贈答品、台所用品(鍋/ポット/テーブルウェア)、食器(割れものは箱入のもの)、食料品(調味料/コーヒー/缶詰/食用油)、雑貨(バッグ/靴/スリッパなど)
    お願い:以下のものはご遠慮願います中古の衣料(ユニフォームなどの学用品含む)、梱包されていない食器や中古の食器、電化製品、楽器、家具(たんす、ベットなど)

    【バザー開催日】2009年11月29日(日)10:00~15:00※雨天の場合は12月5日に順延
    【場所】静岡市青葉緑地B1 ~B2ブロック(静岡市役所・呉服町側)
    問合せ先・バザー用品送付先【カレーズの会 事務局】〒420-0856 静岡市葵区駿府町1-70 静岡県ボランティア協会内 カレーズの会バザー担当係電話:054-255-7326


映画「チンギスハーンの秘密」が
「モントリオール―2009」世界映画フェスティバルに出品

    彩の国さいたま芸術劇場大ホールで行われたシベリアサハ共和国の音楽劇「キースデビリエ」(大野が総合プロデュース)に続いて、アンドレイ・ボリソフ文化大臣が情熱を傾けていた映画「チンギスハーンの秘密」が完成し、カナダ・モントリオール音楽祭でプレミア上演され好評を博したようです(以下)。

    「チンギスハーンの秘密」が9月2日に開催された「モントリオール ―2009」世界映画フェスティバル(400人収容の劇場)で公開された。30分前から券を買い求める列ができた。ヤクート・サハ共和国のボリソフ文化大臣が監督した映画「チンギスハーンの秘密」がこの映画祭に出品され、好評を博した。

    ボリソフ文化大臣はプレゼンテーションではホムスの演奏をして、聴衆を驚かせ、また、壮大で美しい風景を表現した映画に大きな拍手を受けた。( ИА SAKHALIFE.RU 2 сентября в рамках мирового кинофестиваля "Монреаль - 2009"より寺尾近三氏訳)

    チンギスハーンの映画をつくるという話は、私が「キースデビリエ日本公演」の準備のためにヤクーツクを訪れた際に直接ボリソフ大臣から伺っていました。

    チンギスハーンは、アムール川の上流オノン川付近で誕生し、大ハーンに即位。さまざまな民族文化を吸収したユーラシアの帝国を築き今日の国家民族の土台を築いた人物ですが、ボリソフ氏は、チンギスハーンは母方(メルキト部族のホエルン)の血統を通じてバイカル湖東方にいたトルコ系民族と密接な関係を有し、サハ(ヤクート)人にもかかわり深い人物として興味を持っていることがわかりました。

    モンゴル帝国は、後にさまざまな民族出身者を国家の経営に重用したことで知られていますが、特にウィグル人については天山ウィグル王国のウィグル人を「第5のハーン家」として登用しており、これは他民族他文化への壁の無い人物だったチンギスハーン以来の伝統です。

    ボリソフ氏の映画には、サハの英雄叙事詩「オロンホ」も絡ませた、「サハ版チンギスハーンの世界」が描かれていると想像されます。私は、映画の内容や上演に興味をもっており、現在問い合わせ中です。(大野)


環境とエネルギー(1)アラル海の縮小と塩害  町野 勤

    歴史専攻の畑違いながらも長年、環境の仕事に携わり、またエネルギー問題にもバイオ発酵水素を研究している筆者が環境とエネルギー問題などについてこれから連載していきます。今回のテーマは、「アラル海の縮小と塩害」です。

    アラル海は、北はカザフスタン、南はウズベキスタンにまたがる湖で、湖に注ぐ主要河川は、アム川、シル川であり、源流は遠くパミール高原と天山山脈です。

    1960年代、綿花と水稲栽培のための灌漑が実施されたことにより、この二つの大きな川の流量が激減し、アラル海の水位も低下、1989年頃元々くびれていた地形により南北に二分割された。以下、新聞記事から。

    『ソ連時代からの無謀なかんがい事業の影響で水量が減り、二つに分かれた中央アジアのアラル海のうち、南半分の「大アラル海」の水位が急激に低下、今年に入り東側が干上がり、西側も塩分濃度の上昇で魚類が全滅したことが2日分かった。ロシア科学アカデミー海洋学研究所のピョートル・ザビヤロフ副所長が明らかにした。 

    カザフスタンが北半分の「小アラル海」を守るため2005年にダム(Kok-Aral Dam)を建設、下流で大半がウズベキスタン側にある大アラル海への水の流入が途絶えたのが原因という。露出した塩が数百キロ飛散して植物が枯れ、住民の呼吸器疾患が深刻化する恐れがあり、周辺の寒暖差が大きくなるなど気候への悪影響も懸念される。 

    副所長によると、今年8月に大アラル海を調査したところ、この1年で「史上最悪で予想外」の約1・5メートルの水位低下を観測。アラル海全体の水量は1960年に比べ約91%が失われたという。

    大アラル海では約1%だった塩分濃度が今年は13%を突破した。通常の海水の約4倍で、魚類の生存は不可能。昔は漁業が盛んだったが、03年以降、魚の生息は確認されておらず、残る小型のエビなどの死滅も時間の問題という。2009年10月3日共同通信』

    また、今年の5月にカザフスタンのアルマティにおいて、「アラル海を守る国際サミット」が行われ、中央アジア5カ国の大統領が一堂に会した。水問題など広く討議されたが、ホストであるナザルバエフ大統領はアラル海の縮小にのみ焦点をあてたステイトメントを作成し、5カ国の大統領がサインしたようです。

    日本でも大学等が湖周辺住民の塩害による健康影響の調査を実施したり、京都を拠点とするNPO法人・市民環境研究所がアラル海旧湖底沙漠地域で植林活動を実施している「アラルの森プロジェクト」があります。

    雨量の多い日本では、塩害問題は聞きなれないですが、それでも那珂川・利根川では、近年何回か上水・工業・農業利用の取水量が多くなり、流量が減少し、渇水となり、海水が河口から上流へ20km近く遡上し、塩分濃度が高くなり問題になりました。

    私も15年位前にその調査をしたことがあります。海に面しているわが国の塩害と、大陸の内陸にあり、規模が大きいアラル海の塩害では、生成構造も対策も違うと思います。

    しかし水利用やダム問題等は共通し、また、降雨の少ない地域で過去世界第4位の大きさであったアラル海の縮小は気候にも影響を与え、今後、水利用と地球温暖化の問題と合わせて考えなければいけないと思います。(続く)


11月15日に神奈川県立ふれあいの村で「モンゴル文化ナーダム」開催

    神奈川県愛川町には「江ノ島で噴き出すといわれる塩川の滝」という水脈伝説がある。これは、中央アジアに起源を持つゾロアスター教に淵源をもつアナーヒター女神につながる観音信仰、弁才天を示し、「フカルヤ峰からウオゥルカシャ海に向かってたぎり落ち」る滝や水への信仰そのものであり、私は地元愛川町の町民活動サポートセンターの紹介記事で「(愛川町の中津川には)シルクロードの風が吹いている」と書いた。

    奈良から相模にやってきたシルクロードをつなぐ女神の回廊;祈りの系譜が潜む町、「シルクロードとつながる関東の祈りの空間」が愛川町のキャッチコピーとしてふさわしい。

    この愛川町ではじめた「愛川サライ」の活動の第一歩として、21日、神奈川県のシルク産業の拠点であった地元半原の繊維産業会館で「レインボープラザ・シルクロード交流会」が開催された。

    モンゴルブフ(相撲)クラブのバーボルドさんが招聘したモンゴル民謡衣裳芸術公演団と地元の茶道、日本舞踊関係者、地元ボランティアとの交流の集いには56人が集まり、地元の食材で歓迎した夕方のバーベキューは肩を抱き合い大合唱と大いに盛り上がった。

    23日新宿文化センターで開催された本公演も、モンゴル民謡界の大御所オヨンビルグさんのオルティンドーや斬新な衣裳デザインを紹介した華やかなショーでもう一つのモンゴルがアピールされました。

    「モンゴル」は草原を駆け抜けユーラシアを支配した騎馬民族、という印象が強いが、「モンゴル」の意味は「永遠の川」とされ、私はアムール川のことを指していると考えており、水と深いつながりのある言葉である。

    またモンゴル時代は、ユーラシアの人と文化の往来、シルクロードの交流が最も盛んに行われた時代で、今日のアジアの国家や民族地図の土台が築かれた。

    私は今後、毎年秋に愛川町半原・田代地区を中心に「モンゴル文化ナーダム」が開催されることを希望している。

    11月15日には、ユーラシアンクラブ「愛川サライ」の仲間とバーボルドさんを中心に、映像作家のアロハンさん、オフィス遊牧民の栗原広之さん、モンゴル文化に詳しい福島達大さんらと協力して、神奈川県立愛川ふれあいの村紅葉祭に「モンゴル文化ナーダム」として参加することになりました。

    モンゴル相撲、音楽、料理に、ドキュメンタリー映像上映や樋口直正さんからはモンゴルのゲルも提供を受けて、地元の小学生にゲルの組み立ても紹介することになっている。今後毎年継続して開催できるようにするための財源確保に頭を悩ましています。ご寄付ご支援をお願いします。

    紅葉祭は午前9時半から午後2時半まで、地元内陸工業団地で働くブラジルやペルーの日系人がそれぞれの料理も紹介、地元の食材文化が集う楽しい祭りである。交通手段は本厚木バスセンターから半原行き「愛川ふれあいの村・野外センター前」下車徒歩10分」。参加費は無料。遠方ですが自然豊かなほっとする空間で癒しのほしい人はどうぞおいでください。(大野)


●気になるユーラシア短信

トルコ・アルメニア国交正常化、前途多難の船出

    【イスタンブール=田尾茂樹】国交正常化協議を続けてきたトルコとアルメニアは10日、スイス・チューリヒで外交関係樹立などの合意文書に調印した。

    だが、調印後発表する声明案を巡る調整難航で式典が予定よりも3時間以上遅れて始まり、ほぼ1世紀ぶりの「和解」は、冒頭から前途多難を印象付けた。

    両国は、第1次大戦中のオスマン帝国下で起きたとされるアルメニア人虐殺を巡り対立した。10日の調印式にはトルコのダウトオール、アルメニアのナルバンジャン両外相のほか、交渉を後押しした米国のクリントン国務長官、エネルギー戦略上の思惑から両国間の安定を重視するロシアのラブロフ外相や欧州連合(EU)代表も同席した。

    だが、トルコの報道によると、土壇場でアルメニア側がトルコの声明文案にあったナゴルノ・カラバフ紛争への言及に難色を表明。ナルバンジャン外相は一時、調印式会場からホテルに引き返してしまった。

    このため、クリントン長官が同外相のホテルに急行。説得して調印式会場に連れ戻す一方、ダウトオール外相にも何度も電話し、結局、調印後の声明発表を見送ることで決着を見た。

    式典では、笑みを浮かべるダウトオール外相に対して、ナルバンジャン外相は硬い表情を崩さず、ミゾの深さをうかがわせていた。(2009年10月11日読売新聞)


編集後記:完成度の高いニュースレターを6年余り継続発行していただいた高橋さんが顧問に就任。リリーフ編集者として当面大野が担当することになりました。とはいえ計画通りの紙面にはなりませんでした。レベルの低下はいかんともしがたいのですがしばらくお付き合いください。政権交代で「郵政民営化」に歯止めがかかろうとしていますが、行き過ぎた「民営化原理主義」の弊害はあちこちに残されたまま。地域の文化芸術もその一つ。荒廃が進んでいます。何とかしたいところです。(大野)


発行:特定非営利活動法人ユーラシアンクラブ 発行人:大野遼 住所:〒151-0053東京都渋谷区代々木2-13-2 第一広田ビルTEL:03-5371-5548 FAX:046-285-4895 E-MAIL:paf02266@nifty.ne.jp ホームペイジ:http://eurasianclub.cocolog-nifty.com/ 郵便振替:00190-7-87777ユーラシアンクラブ。お振り込の場合:ゆうちょ銀行0一九店 当座預金 0087777 ユーラシアンクラブ 会費、ご寄付はこちらへお願い致します。ご連絡はメールかファックスを希望します。
2009 11 01 Non Profit Organization Eurasian Club

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